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人間はまだすべてのことを知らない

人間が知っている、いないに関係なく、地球は太陽の周りを自転しながら回っています。ガリレオが発見するずっと以前からそうなのです。ニュートンが万有引力を発見するずっと以前から、地球は引力でものを引っ張りつづけています。自然の法則や真実というのは、誰かが発見する前から既にあるのです。生物の体内のタンパク質が位置シグナルによって目的地に向かっているということについては、つい最近まで誰も知りませんでした。誰も知らないけれど、体の中のタンパク質はその位置シグナルを頼りに目的地に間違いなく到着しているのです。人間は、食べ物として野菜や果物や穀類や時には家畜を選び、食料としてきました。その食べ物が体の中でどうなるかなんて知らなくても、ちゃんと体のほうで消化・吸収・利用してきました。何でも経験に基づいて、自然にとれる食べ物を摂って生活しているうちはまだ良かったのです。科学が発達してきて、目に見えないものも見えるようになり、何と何か関係してどうなるのかということを考えるようになりました。体は心臓や肝臓などの臓器でできていて、臓器は筋肉や結合組織という組織でできていて、組織は細胞でできていて、細胞はいろいろな分子でできていて、というようにどんどん最小単位まで掘り下げられていきました。栄養素もそうです。果物や野菜や穀類といった分類ではなく、炭水化物、脂肪、タンパク質といったものに分けられ、次に微量だがなくてはならない栄養物質ということで、ビタミンやミネラルが発見されていきました。ビタミンやミネラルも分子や原子といった最小単位です。人間はひとまず最小単位まで追究できると安心します。壊血病はビタミンCが欠乏しているから起こるのだ、ということが分かるとそれで安心なのです。しかし実は、ビタミンCはチームで働いているメンバーの1人に過ぎなかったのです。チームプレーをするときに、1人でできることは限られます。例えば野球をするときに、相手のチームが9人いるのに、こちらが1人では話になりません。その1人がピッチャーをすればとりあえず試合はできますが、結果は悲惨なもので、相手の攻撃はいつまでたっても終わらないでしょう。そんなときにはピッチャーを増やしても何の助けにもなりません。一度に投げられるのは1人なのですから、ほかにほしいのは1塁や2塁などを守る8人の野手なのです。つまり、とりあえずピッチャーー人でも試合ができてしまったために、勘違いが生まれたのです。壊血病を治すのは、ビタミンCだと思い込んでしまったのです。科学の世界は、原因物質が一つの分子だということを明らかにすることがエレガントだという世界ですから、無理もありません。ビタミンCの発見者であるセント・ジェルジは、チームで働く栄養素の存在に気づいていましたが、彼の話に耳を貸す人はいませんでした。精製されたビタミンC単独が一人歩きするようになったのです。ほかのビタミンやミネラルや最近騒がれているさまざまな栄養素も同じです。すべて精製された単品が騒がれています。ポリフェノールの抗酸化力がいくら強くても、それは実験室での話であって、ポリフェノールだけを摂ればいいというものではありません。栄養素はチームで考えるべきで、単品だけで考えるべきものではないのです。最新の知識によると、さまざまな栄養素をチームで摂れる食べ物が望ましいことが明らかになっているのです。何のことはない、食べ物を摂っていればいいのかと思うかもしれませんが、現在の食べ物には、現代人が必要とするだけの栄養素が含まれていないのです。この不足している栄養素は、精製栄養素では補えません。食べ物の栄養素の不足は、やはり食べ物由来の無精製栄養素でしか補えないのです。現代人のやっかいなところは、昔の人間が何気なくしていたことを科学の目で再認識しなければ分からないところです。昔から摂ってきた食べ物の持つ力についてすべてのことが分かったわけではありませんが、食べ物の仕組みを再認識したら、余計なことを考えずに、その自然の仕組みを素直に利用すればいいのです。